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反証監査:①回転率・LTVの罠

判定

現状のブックは、事業として成立するLTV構造を示していない。 示しているのは、将来の役割追加と買い足しを置けば年間本数が増える、という未検証の仮説である。1号単体の補充、役割横断の純増、価格別の限界利益、顧客維持を同じコホートで接続できていないため、LTV/CACも回収期間も計算不能である。

重大度は、致命=このまま事業成立・年商計画の根拠に使えない、重大=Go判断前に数値化が必要、とする。

指摘

1

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L253-L263。「5本でLTVを組む」「役割数×補充回数」と置く箇所。

→【弱点】これはLTV式ではない。継続月数、月別生存率、正味売上、売上原価、物流・決済・返品等の変動費がなく、顧客あたり限界利益を出せない。15_ポテンシャル評価.md:L36-L38自身がチャネル実現係数は粗利率ではないと明記しているため、同係数を使ってもLTV/CACにはならない。

→【修正案】価格×チャネル×獲得月のコホートごとに、少なくとも次式へ置き換える。12か月LTV = 初回購入の限界利益 + Σ月 [生存率 ×(同一SKU補充回数×1本当たり限界利益 + 純増クロス購入回数×1本当たり限界利益)] − 顧客単位の追加変動費。CAC控除後利益と回収月も併記し、1号単体と拡張後を分ける。

→【重大度】致命

2

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L255-L261。「手持ち色が増えるほど使用回数が増える」「役割数×補充回数」とする箇所。

→【弱点】手持ち色の数は使用機会の数ではない。唇を塗る総機会が一定なら、色が増えても機会が色間に分散するだけで、本品の使用回数は増えない。役割を増やすほど1役割あたりの使用頻度が下がり、補充周期が長くなる可能性もある。しかも15_ポテンシャル評価.md:L40-L43は、同じ人・同じ購入に紐づくCEPを単純加算してはならないとしている。役割だけ加算可能とする根拠はない。

→【修正案】積ではなく、年間純増本数/人 = Σ役割 [役割購入率 × 条件付き年間本数] − 同一機会の代替・カニバリ本数で計算する。測るのは保有色数ではなく、対象となる全リップ使用機会、本品併用率、役割別利用率、役割間の代替率、役割別の実消尽本数とする。

→【重大度】致命

3

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L11, L84-L90, L207-L209, L319-L320ではC01朝用途をC04合格後の条件付き副用途とする一方、15_ポテンシャル評価.md:L10, L60-L66, L99-L108ではC04+C01を一体で市場・売上計算し、C01を反復習慣に置く。

→【弱点】回転率を支える中核が、商品として成立するか未確定のC01に依存している。C01不合格時にも金額SAM67.34億円、中央4.12億円、3年目318千個が維持される計算はない。15_WHO_CEPマップ.md:L418-L425も週使用頻度は未確認で、C01/C04を同条件で比較してから決めるとしている。ブックだけがC04主用途を固定しながら、売上側ではC01の習慣頻度を既得のように使っている。

→【修正案】最低でも「C04単独」「C01単独」「同一処方でC04+C01両立」の3ケースに分け、対象者数、週使用日、1回使用量、年補充本数、正価購入率、12か月限界利益LTVを再計算する。C04単独でLTV/CACが成立しないなら、C01合格前に事業成立とは判定しない。

→【重大度】致命

4

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L251, L263と、頻度根拠として参照される15_WHO_CEPマップ.md:L31, L83, L109, L260, L418-L422, L523, L578

→【弱点】検索量、コメント件数、下地需要の存在は、W1が本品を週何日使うかを示さない。指定資料自身が、W1の人数・週頻度・増分購入率・正価購入率を未確認としている。課題が食後に起きる頻度、実際に本品で直す率、1回使用量、使い切り、再注文は別の変数であり、現在は一つも連結されていない。

→【修正案】同一対象者で、課題発生日/週 → 本品使用日/週 → 使用回数/日 → 1回使用量 → 実消尽日 → 消尽後の正価再注文を連続計測する。購入意向・検索・動画反応は回転率の代替指標にしない。

→【重大度】致命

5

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L256。「容量を想定する週の使用日数から逆算」「消尽窓」とする箇所。

→【弱点】容量、1回吐出量、1日使用回数、週使用日数、廃棄率がないため、消尽窓を算出できない。小容量化で補充を早めても、2,420円中心の価格では容量単価の悪化が正価再購入を落とし得る。容量設計だけで回転率を作るのは、使用需要の証明ではない。

→【修正案】各試作について消尽日数 = 内容量 ÷(1回使用量×1日使用回数×週使用日数/7)を事前登録し、計算上の消尽日と実測残量を照合する。容量ごとに正価、容量単価、180日内の使い切り率、使い切り後再注文率を比較し、未消尽の買い足しと補充を分ける。

→【重大度】重大

6

【箇所】15_ポテンシャル評価.md:L149-L152, L208-L224の「60%が1個、30%が2個、10%が3個」「180日買い足し35〜40%以上」と、20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L265のD0+45除外。

→【弱点】60/30/10は平均1.50個を作るために置いた分布であり、観測結果ではない。同時購入、色違い、別役割、同一SKU補充を区別していないので、40%を「反復購入の実体」とは呼べない。180日35〜40%も上振れ条件であって実績ではない。D0+45を補充から除外する方針はあるが、その後どの窓で何を補充と認定するかがない。

→【修正案】注文行を、初回、初回同梱、45日以内追加、同一SKU消尽後補充、色違い、別役割、ギフトに分類する。90/180/365日で、同一SKU補充率、純増クロス購入率、全購入者再購入率、購入間隔中央値を別々に出す。3年目平均1.50個は、この実績分解からのみ更新する。

→【重大度】致命

7

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L13, L277-L283の1,980/2,420/2,970円、15_ポテンシャル評価.md:L88-L95, L129-L145の1,980/2,200/2,420円と認識単価1,850→1,570円、15_WHO_CEPマップ.md:L21, L149, L456-L458の価格許容未確認。

→【弱点】価格前提が一致せず、どの価格の再購入率でLTVを組むか決まっていない。3年計画では平均個数が1.15→1.50個と30.4%増えても、認識単価が1,850→1,570円と15.1%下がるため、当社認識売上/人は2,127.5円→2,355円、10.7%しか増えない。しかもこれは売上であり限界利益ではない。2,420円中心で買う人と、1,980円で買う人の継続を混ぜればLTVは偽装される。

→【修正案】価格×チャネル別に、初回CVRだけでなく180/365日補充率、純増クロス購入率、値引き率、返品率、正味認識単価、限界利益/人、CAC回収月を出す。1,980円のリピートを2,420/2,970円へ外挿しない。

→【重大度】致命

8

【箇所】15_ポテンシャル評価.md:L123-L152の3年売上例と、20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L261-L263のLTV主張。

→【弱点】3年目4.99億円はLTV成長の証拠ではない。2年目→3年目で購入者数は120千人→212千人、76.7%増える一方、認識売上/人は1.35×1,730=2,335.5円から1.50×1,570=2,355円へ0.8%しか増えない。1年目→3年目の数量増263.95千個を分解しても、購入者数増の寄与が189.75千個=71.9%、1人あたり個数増の寄与が74.2千個=28.1%である。さらに3年目318千個のうち、全員の最初の1個を超える106千個=1.6642億円、売上の33.3%は未実証の2・3個目である。各年購入者のうち既存継続者が何人かもないため、全員が新規でも同じ表が成立する。

→【修正案】年次表を「新規購入者」「前年以前からの継続購入者」「復帰者」「離反者」に分け、各群の同一SKU補充本数、別役割の純増本数、認識売上、限界利益、獲得CACを出す。新規獲得ゼロでも既存コホートが生む翌年限界利益をLTV根拠として別掲する。

→【重大度】致命

9

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L162-L179, L258, L261, L331-L336。未発売の前工程・後工程・部位違いをクロス購入に使う箇所。

→【弱点】1号のLTV不足を、仕様・価格・発売時期・購入率が未定の2号以降で埋めている。将来SKUのクロス購入は1号事業のLTVではない。しかも15_ポテンシャル評価.md:L149-L160で3年目に足す58千個はC09新色とC07持ち歩き仕様であり、ブックがいう前工程・後工程・部位違いの「役割別クロス購入」の証拠ではない。追加役割が既存SKUの補充を食う可能性も未計上で、2号開発費と在庫負担もLTV側に入っていない。

→【修正案】Go条件を二段に分ける。第1段は1号単体の12か月限界利益LTV/CACと回収期間。第2段は実売した2号ごとの増分クロス購入率とカニバリ控除後限界利益。第1段が不成立なら、未発売SKUを足してGoにしない。

→【重大度】致命

10

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L259, L263。「相性プロフィールで次に買う色の精度を上げる」とする箇所。

→【弱点】プロフィールが増やすのは選択精度であり、自社商品の再購入とは限らない。手持ちの他社リップ選びを助けて終わる可能性もある。プロフィール登録率、推奨利用率、購入増分、返品減、再購入増分のどれもLTV指標に接続されていない。

→【修正案】同意取得者の中で、プロフィール推奨あり/なしを比較し、90/180/365日の自社正価購入、返品、限界利益の増分を測る。増分がない限り、データ資産とは呼べてもLTVエンジンには数えない。

→【重大度】重大

11

【箇所】20_スーパーサブ_コンセプトブック.md:L217, L219-L221, L263では合格数値を未設定とし、15_ポテンシャル評価.md:L208-L228には5億円条件として平均1.4〜1.5個、180日買い足し35〜40%、通常価格消化等を置く箇所。

→【弱点】事業計画側にある仮定上の必要条件が、コンセプトブックのGo/No-Goへ接続されていない。「数値は要検証」のままでは、どの結果でも設計を維持でき、反証不能である。また平均個数と買い足し率だけでは利益が出るか判定できない。

→【修正案】試験前に、C04単独/C04+C01、価格、チャネルごとに、①週使用日、②実消尽率、③180/365日同一SKU補充率、④純増クロス購入率、⑤年本数、⑥限界利益LTV、⑦CAC、⑧回収月の最低線を一枚に固定する。15_ポテンシャル評価.mdの35〜40%・1.4〜1.5個は「観測実績」ではなく「5億円計画が要求する仮定値」と明記し、未達時は売上計画を下げる。

→【重大度】致命

12

【箇所】15_ポテンシャル評価.md:L88-L108, L113-L119。リップカラー市場962億円にW1数量シェア、C04+C01購入比率、「複数年獲得率」を掛けて本品売上を出す箇所。

→【弱点】二つの単位が混線している。第一に、好きなリップを代替しない追加商品なのに、既存リップカラーの年間購入数量を本品の購入数量へ移す有料アタッチ率がない。第二に、8.5%を「複数年獲得率」と定義しながら年間市場数量へ掛け、単年売上260.2千個としている。複数年の累積顧客獲得率なら、当年残存率と当年購入頻度を介さなければ年間数量にはならない。

→【修正案】SAMを対象人数 × 本品の正価アタッチ率 × 年間本数 × 正価で作り直し、既存リップ予算からの代替支出と追加支出を分ける。「複数年獲得率」は年別新規獲得数に変え、前年以前の残存者、当年アクティブ率、年本数をコホートで積み上げる。年間数量シェアを置くなら名称を変え、累積獲得率と混ぜない。

→【重大度】致命

13

【箇所】15_ポテンシャル評価.md:L228の下振れ例。

→【弱点】記載された生式と結論が一致しない。1,387千個 × 2.0% × 1.2個 × 1,700円 = 56,589,600円 = 0.5659億円であり、「1〜2億円台前半」にはならない。追加数量の式がない限り、下振れ売上を少なくとも約1.8倍に見せている。

→【修正案】同じ前提を使うなら0.57億円へ訂正する。1〜2億円になる別経路を主張するなら、追加顧客数、追加SKU本数、チャネル認識単価を生式に明示する。

→【重大度】致命

最終反証

「サポート役でも、役割を増やせば年間本数は積み上がる」は、現在の数字からは導けない。指定資料が示すのは、W1の週使用頻度も正価再購入も未確認で、3年目の1.50個と180日35〜40%は必要条件として置いただけ、という状態である。しかも3年目売上は購入者数の拡大に依存し、顧客あたり認識売上は2年目からほぼ横ばいである。

したがって現時点の答えは、低回転をLTVで克服した事業構造ではなく、低回転を将来SKUと新規獲得で覆った売上算術である。